旅程未定

瀬戸内海を飲み干したい

202309欧州旅行記|5 トラムはビールのつまみになる

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3日目 9月5日(火曜日)のつづき

左手にポツダムを眺めながら、徐々に高度を落としていく。広い森の奥にはベルリン市街地が見えている。目的地はもうすぐだ。ベルリンの南方に回り込んで、16時ちょうどにブランデンブルク国際空港に着陸した。預け荷物も無いのでさっさと駅に向かう。今日は明るいうちに行っておきたい場所がある。

 

ピンボケ

コンコースの券売機でA,B,Cゾーンで使用できる24時間チケットを購入した。ブランデンブルク空港はベルリン市域から微妙に外れた場所に位置していて、ゾーンの設定もちょっと外れたCゾーンに設定されている。ABゾーンのチケットとの差額は1EUR程度で、大抵の観光客はわざわざCゾーンに戻ってこないだろうから、その差額が実質空港アクセスの使用料のようになっているように思える。

ホームに降りて忘れずにやっておくことがある。ホームに設置されている打刻機にチケットを通す。打刻をして初めて有効なチケットとなる。ヨーロッパでは一般的なスタイルだが、さっきまでいたストックホルムは紙のチケットが廃止されているのでここで初めて体験することとなった。
Google mapと電光掲示板を頼りに乗車するべき列車を探す。話は逸れるがDB(ドイツ鉄道)の各駅に設置されている電光掲示板が非常に好みだ。青焼き図面を連想させる青地に白文字の表示から、工業国ドイツらしさを感じる。

DBのFEXに乗ってベルリン市街地へと向かう。2階建て客車の上層の座席に腰かけた。

S-Bahnに乗り換えるため途中のBerlin Ostkreuzで下車した。ホームの長さが足りてないのか、1番後のドアがホームからはみ出していた。ドアカットみたいな機能があるのだろうか。

普通に開いた。ダメでしょ。

 

平然と発車するFEXを呆然と見送った私は、S-Bahnのホームへと降りた。薄暗くて落書だらけのホームはアウェイ感がある。やってきた電車の中も落書きだらけで、ベルリンの最初の印象はかなり悪かった。もちろん欧州の平均を考えればこれくらい普通かちょっとマシなくらいなのだけれども。

 

そんなこんなで30分程でRahnsdorf駅に着いた。

駅舎を出ると、早速お目当ての電車が見えた。西日を浴びて緑の絨毯の上に佇むのは、ここRahnsdorfとWoltersdorfを結ぶ5.6kmのトラム路線”Straßenbahn Woltersdorf”(ヴォルスタードルフ軌道)の単車だ。ちなみにこの路線はCゾーンなので、空港で買ったチケットを活かせる。

Rahnsdorf駅を出てすぐに森の中に吸い込まれる。

事前情報で単車に似つかわしくない飛ばし方をするとは聞いていたが、実際目の当たりにするとちょっと怖いくらいの飛ばし方だ。

森を駆け抜けて隣町へ出てきた。

と思ったら終点まで行く前に乗客も運転士も全員降りてしまった。どうやらこのBerliner Platzという電停で一部の電車が降り返してるらしい。写真を見返してみると、方向幕にも行先がちゃんと書いてあった。せっかくなのでこの辺りで撮ってみようか。

適当な撮影場所を探していたら、先客のカメラマンがいた。お互い挨拶するでも距離を置くでもなく、ただやってくる電車をファインダーで捉える。撮り終えたら無言でその場を去った。向こうも間違いなく拗らせてるオタクだろう。

この時点でベルリンにだいぶ満足してしまった。終点まで乗り通さず本日の宿のあるベルリン中央駅まで帰ることにした。

往路よりもきれいな電車が来た

ベルリンでS-Bahnに乗った人ならわかっていただけると思うが、ドアが閉まる際の3点チャイムが脳にこべり付く。東ベルリンの景色を眺めながらウトウトしていると爆音チャイムが流れて起こされる。40分程それを繰り返してBerlin Hbfに到着した。

S-Bahnの発着する高架ホームは2面4線で、ガラスのドームで覆われている。下を覗き込むと高架ホームに対して垂直に走る地下ホームが見える。とんでもない高低差があり足がすくむ。右手に持つカメラのストラップを再確認した。

コンコースは何層にも重なっているが、それらのフロアを支える柱は随分と細く見えて少し不安になる。地下ホームは4面8線でこれだけでもターミナルの風格がある。これとは別に地下鉄が1路線乗り入れてる。とてつもないスケールに圧倒されて動けなくなってしまった。ここに居るだけで何時間でも潰せる。
地下に降りてしまうといよいよ駅から出られなさそうなので翌日に回すことにする。とりあえず宿に荷物を置いて身軽になりたい。

 

宿の前に壁の切れ端

地図だけ見て駅近だからと予約を取ったが、なんだかんだで駅から10分ほどかかった。ヨーロッパ入りして以来ドミトリーでしか寝れていないのだが、今日はシングルの部屋を取っている。久々にプライベートな空間を手に入れられるというのであれば徒歩10分など苦ではない。チェックインカウンターで前の客が何やら手続きにてこずっていてかなり待たされたが、無事チェックインすることが出来た。カードキーを受け取って今日のお部屋に向かう。

 

カードをかざしてドアを開けた瞬間、部屋の中の4,5人から「Hello!」と声を掛けられた。脳が固まった。

あれ?シングルルームじゃなかったっけ?混乱を隠しながら、2段ベッドの並ぶドミトリールームの中央にある椅子に腰かけた。先客たちは英語で談笑しているが、内容は1割も分からない。

少し冷静になったところで予約内容を再確認してみた。ちゃんとDormitoryのsingle bedと書いてあった。部屋の写真は上の1枚のみで、2段ベッドなど写っていなかった。実際の部屋には2段ベッドが3つと、シングルベッドが2つ置かれていた。

ルームキーには、部屋番号の右に(5)と記載されている。キーを受け取った時点ではこれはフロアの番号だと思っていたが、どうやらこれはベッド番号らしい。うーん。

まあシングルベッド予約してるし、3泊連続2段ベッドを避けられただけ良しとしよう。なんて思いながら自分のベッドを探した。2段ベッドの上段だった。冗談キツイって。

2段ベッドのことSingle bedって表現するのか。表現するらしいので今後は気をつけようと思った。

 

気を取り直して目星をつけていたビアホールへと出かけようと思う。ドイツといえばやっぱりビールだ。

荷物を最小限にして部屋を出ようかなと思っていた矢先、同室の男性がおもむろに布団を床に敷き、スマホを頼りに方角を調べ始めた。それだけだったらそっと部屋を出ればいいだけなのだが、その儀式は部屋のドアへのルートを塞ぐ場所で行われていた。彼の頭を跨いで出るわけにもいかないので、儀式が終わるのを待つ他なくなった。

しばらくすると彼は布団をベッドに戻して、往来が可能となった。彼がどのくらい厳格なのかは分からないが、「今から酒と豚を浴びるように飲み食いしてくるよ」とは言わない方が良いのは確かだろう。ただ「ディナーに行ってくるよ」とだけ告げて再び街に出た。

M5だかM8のトラムを捕まえて東の方へ出る。お目当てのビアホール、”Hofbräu Wirtshaus Berlin”はアレクサンダー広場の近くにある。ベルリンに来ておいてミュンヘンのビアホールの支店なのはどうなんだろうとも思ったが、別に大した問題ではないだろう。

店に着くと店内と外のテラス席、どちらがいいか尋ねられたので後者を希望した。外で飲むビールは絶対にうまい。

早速1杯目のHofbräu Originalが届いた。店名を冠しているし、きっと看板メニューだろう。ちなみに何も言わなければこのデッカい1.0Lのジョッキが出てくる。

ほどなくしてグリルソーセージが運ばれてきた。もうこれでドイツの全てを味わってしまった気分だ。付け合わせのザワークラウトも酒のアテに丁度いい。

ちびちびソーセージをつまんでいると店員がテントを畳み始めた。実に開放的で酒が進む。

1杯目を飲み干したので次は別のものを飲んでみたい。

ウェイターの姉さんを呼び隣のテーブルを指さして、あの黒いの飲みたい!と伝えたところこれが出てきた。Hofbräu Dunkelというらしい。

店の前の通りを走るトラムを眺めながら気持ちよくなって色々頼んだ。

最後会計を頼むときに「チップはいくらにする?」と聞かれたので「20!」と答えた。

20%になったか20EURになったかは不明だが、大変な満足度であったことは確かに覚えている。

 

千鳥足になりながらも何とか宿には無事帰って来れた。

2段ベッドの上段に這い上がって目を閉じた。意識が落ちる前にスマホとカメラの充電をしていたことは褒めてあげたい。

 

 

 

つづき

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