旅程未定

瀬戸内海を飲み干したい

202309欧州旅行記|1 欧州上陸

9月3日 日曜日

搭乗便の出発時刻である8時30分のきっかり2時間前 6時30分に羽田空港第3ターミナルに着いた。
チェックインカウンターで連れのオタク(以下、便宜上Aとします)と落ち合い、チェックイン、保安検査、出国を済ませた頃には7時30分になっていた。
搭乗開始まではまだ余裕がある。免税店でお土産を買って時間を潰す。セブンイレブンで缶ビールと柿ピーを仕入れた。搭乗口前で景気付けに1杯やろうという算段だ。
セブンイレブンから141番搭乗口までは700m程。結構歩く。

長い通路をぬけたさらに先の離れ小島のような場所に141番ゲートはある。辿り着いた頃には搭乗開始のアナウンスが流れていた。
やや急ぎながら乾杯。ビールで喉を潤して搭乗する。中国国際航空のA321が出迎えてくれた。

機内はほぼ満席だが、運のいいことに我々の座る3列シートには他の客が来なかった。北京までの間とはいえ、広々と席を使えるのは嬉しい。
CA184便は定刻通りに動き出し、C滑走路から北に向かって離陸した。
羽田発のフライトは離陸直後の景色が楽しくて良い。左の窓には東京タワー、スカイツリー、東京ドームといったランドマークが映る。鉄道や河川から現在地を考えている時間が一番の機内エンタメだと思う。

日本アルプスを飛び越えて新幹線開業直前の敦賀を左に見ながら日本海に出た。出発から1時間ほど経ち退屈しそうになったところで機内食が提供された。私も連れも朝から何も食べておらず空腹だった。

メニューは"Teriyaki chicken rice"か"Pork udon noodle"の2択で、前者を所望したが品切れで後者が運ばれてきた。焼きうどんがでてきた。お味は至って普通である。


機内食を食べ終えて窓を覗くと、眼下に港湾施設が見える。おそらく韓国入りしたのだろう。どの辺か特定できないまま、半島は雲の下に隠れてしまった。

포항っぽい 今調べた


次に陸地が見えたのは降下を開始した後、北京近郊に来た時だった。霞んでいて見通しが効かない。露骨に空気が悪くなったのを感じる。

程なくして北京首都国際空港に着陸した。12時20分、短針を30°巻き戻して現地時刻11時20分にユーラシア大陸に上陸した。

「乗換」の看板に従ってターミナルを歩く。モタモタしていると検査で随分待たされるという噂を聞いていたので早歩きで行く。

途中の看板で目に入った「外国人指紋自助採集区」の字面のインパクトにちょっとやられた。少し進んだ先に自動チェックイン機のようにずらりと機械が並んでいた。これで指紋を登録できるらしいが、どういった目的かは不明。スルーして乗継ゲートに向かう。
ここでパスポートと搭乗券のチェックがあった。顔写真を撮られつつ、手荷物検査へ。

カメラのバッテリーから、ガンマイクの中に入っているボタン電池まで見逃されず、カバン中の全ての電子機器がチェックされた。復路では電子機器はまとめておいた方がスムーズに通れそうだ。
検査を抜けて国際線出発ロビーに合流した。免税店が並ぶエリアだが、どの店舗も営業してる気配は無い。シャッターの中を覗いて見てももぬけの殻。

この空港大丈夫か?と心配しながら進んでいくとまた免税店エリアが現れた。こちらではちゃんと営業していた。レストランも一応チェックしてみる。西式の飲食店として、スタバ、ピザハット、ケンフラチンの3店舗が集まっている。


ターミナル散策も済んでしまったのでもう搭乗口に向かう。思いのほか乗継に時間がかからなかったので1時間以上の余裕が出来た。暇つぶしの為にフリーWiFiへの接続を試みる。SMSで認証コードを受け取る必要があるらしく、渋々電話番号を入力。何度かトライして接続に成功。但し皆さんご存知の通り、普段使っているサービスはほぼ使えないので大した娯楽にはならない。Misskeyには接続出来たのでそこで生存報告をする。Aは接続出来ずに虚無の顔をしていた。


虚無のまま座っていても時間が進まないので、次のフライトのためにも水の確保を試みる。近くの自販機は現金専用で使えない。青島ビールが6元で売られていてなかなかに魅力的だ。もう少し探索してみると、クレジットカードに対応している自販機を発見。勝利を確信し購入画面に進んで銀聯のみ対応であることを知る。見事な逆転負けだ。ならば現金の入手に切り替えよう。

延長戦にもつれ込んだ。両替所を探している最中、ターミナルに設置されているルート案内端末のお世話になった。端末の前に立つと自分の顔と共に次のフライト情報と搭乗口へのルートが表示された。

一瞬何が起きたのか分からず固まってしまった。そして理解した瞬間鳥肌が立った。顔認証の精度は恐ろしく速く正確だった。この国では全ての行動が筒抜けなんだよと、ある意味親切に教えられた気がした。

なんとか辿り着いた両替所にて「手数料60元」の文字を見て完全敗北宣言。アウェイ北京の洗礼を受けてとぼとぼと搭乗口に戻った。

その頃には使用機材が到着していて、「北京航食」と書かれたケータリングトラックが積み込みを行っていた。次の長時間フライトの満足度は彼らの仕事次第と言っても過言では無い。


理由は教えてくれないのでよく分からないが、搭乗開始が30分ほど遅れた。

もうこれ以上攻撃しないで欲しい。

 

我々を待たせたストックホルム行きのA350-900に乗り込む。中国国際航空の塗装はどんな最新鋭の機材でも古臭く見せる魔法のカラーリングだと思う。中に入ってしまえばちゃんと最新鋭機材だ。モニターもあるしエンタメもある。この便はなんだかすごく混んでいて、座席もB席で連れと縦並びとなった。現在地をモニターで確認できるのが救い。
北京を出てモンゴルの上空を飛んでいる頃、最初の機内食が運ばれてきた。ここでは"Spicy chicken rice"を選択。ズッキーニ、キュウリ、メロンと瓜の押し売りに遭う。北京料理の特徴だったりするのだろうか?辛めの味付けは嫌いじゃない。昔乗った北京発の夜行列車で食べた弁当もこういう辛さだった気がする。

食べ終わったあたりで後席から缶ビールを持った手が伸びてきた。Aがドリンクサービスで頼んだ「燕京啤酒」を勧められた。初めて見る銘柄だが、スッキリとした飲み口で香りも華やか。気に入ったので次のタイミングで頼んだ。
ここらでマップを確認する。見たところでずーっとロシアだ。大陸は本当にデカい。戦争映画を観てみたり、旅行記を書いたり、トイレがてら体を伸ばしたりして暇を潰す。

中国時間で21時頃、モスクワの脇を通りながら軽食を頂く。選択肢を聴き取れず困惑していたところ、右隣の中国人の男性が聞き取りやすい英語で教えてくれた。謝謝。助けを借りて"Chicken noodle"を注文。あんかけ焼きそばだろうか。普通に美味しい。


夜から逃げるようにひたすら西を目指す。窓の外はずっと昼。いつの間にかヘルシンキまで来ていた。もうすぐ夢に見た欧州に着くのだ。実感が湧いているような湧いていないようなふわふわした感覚だ。
北京を遅れて出発したのにも関わらず、20分ほどの早着。現地時刻17:00にストックホルム・アーランダ空港に到着した。ボーディングブリッジの隙間から漏れてくる空気がヒンヤリとしていて北欧に来たんだなと感じる。周りの人の流れに身を任せて入国審査へ向かう。

幸い早めに列に並べたので前には10人ほどしかいない。難なく入国できるだろうと思ったものの、遅々として列が進まない。よく見ると、私たちと共に着いた乗客はほとんどが中国人で、言語やら書類やらでてこずりまくっている。困った様子で中国語でこちらに助けを求めてくるのだが、何を言ってるのか分からない。

そんなこんなで体感30分程待たされて緊張の面談。

「Sightseeing.」「2weeks.」「Stockholm.」

終了。

 

ここまでの長旅を労うため、空港のバーで軽く飲むことにした。

ハッピーアワーでお安くなっていたハイネケンで喉を潤す。沁みるぜ。西日が差しているが時刻は19時という現象をまだ脳が処理しきれていない。

異国に来た不安感が湧いてくるが、アルコールは「そんなんどうでもいいよ」と言ってくる。誘導路をゆく見慣れない航空会社の飛行機を眺めながらグラスを傾けるとそんな気がしてきた。

チップスをつまんでハイネケンを2杯飲み干すと列車の時刻が近づいていた。Aは北へ、私は南へ。それぞれの今日寝る場所へ向かうため一時解散。

 

 

黄色いエレベーターを降りると、黄色い電車が待っていた。改札は無く直接電車に乗り込める。

アーランダエクスプレスは、Stockholm C駅までを最速18分で結ぶ。

いくつか用意されている市街までのアクセスの中で最速の選択肢。故に320SEKと金額も少々お高め。

券売機を叩いてみると、U25割引きで定価の半額 160SEKになるらしい。これならかなりコスパが良いな、という事で乗ることにした。

しばし走ってトンネルを抜けた先で信号待ちで止まってしまった。

対向列車を待って先に進むと単線区間に入った。右に目を向けると車庫がある。その周辺で片方の線路がひっぺがされて単線になっている。

なんでも今年の5月末ごろにこの付近で派手に脱線事故を起こしていて、その影響で未だに遅れが出ているらしいのだ。

実はAがチケットを取っていたSJ(スウェーデン国鉄)の列車も、アーランダ空港を経由しないルートに変更されていて、振替の対応に追われていた。

単線区間を過ぎて通常運行に戻ると、心地よい加速ですぐに時速200kmに達した。

通勤電車をぶち抜いてあっという間にStockholm Cに到着した。

ドーム状の屋根がいかにも西欧の駅という感じ。昔はプラットホームだったようにも見えるが実際のところはどうなのだろう。

Blue Line T-Centralen

Blue Line Rådhuset

地下鉄に乗り換えて、Rådhuset駅にて下車。駅全体が芸術作品のようで各駅見ごたえがある。

5分ほど歩いて今日から2泊するホステルに着いた。既にフロントは閉まっていて、そこに置かれている自分の名前の書かれた封筒を開けて鍵を入手した。

2段ベッドが6台置かれた12人部屋に入った。既に寝ている人もちらほらいる。どこのベッドを使えばいいのか分からなかったので、使用された形跡の無い下段の⑧と書かれたベッドに荷物と身体を放り投げた。

他人の居る空間で寝るストレスよりも睡魔の方が全然強かったのか、横になるとすぐに眠りに落ちた。

 

 

 

つづき

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